臥龍中国パンダ保護研究センターについて
パンダの故郷 臥龍パンダ研究センターからのメッセージをご紹介します。
パンダは、中国の国宝であるだけでなく、自然が人類に残した貴重な遺産でもあります。
1961年に、「世界野生生物基金」(今は世界自然基金WWFとなっています)が設立した時、世界中数多くの稀少動物の中から、パンダを「世界自然基金」という国際組織のロゴと旗の図案に選び、世界的範囲ですべての野生稀少動物や植物を保護することの重要なシンボルとしてきました。
それから、重大な国際活動の場面でも、パンダは、よく吉祥動物と選ばれて、平和、団結、友情の象徴として使われてきました。 パンダは、自然界に現在でも存在する数少ない早期生物として、自然界及び生物の進化過程を研究することにおいて、極めて高い科学的研究価値が有ります。
臥龍自然保護区は1963年に設立され、1975年に中国国務院の許可を得て、保護区の面積が20万ヘクタールと拡大されました。
「臥龍自然保護区」の主な役割は、パンダを始め、稀少動物資源と高山生態環境の保護であり、ここは国家林業省に直轄する中国最大のパンダ生態自然保護区で、「パンダの故郷」や「大自然の遺伝子倉庫」とも呼ばれています。
1980年臥龍自然保護区は、国連教育科学文化機関の人と生物圏保護区ネットワークに加入することが許可され、同年、世界野生生物基金と提携して、世界で唯一の中国パンダ保護研究センターを設立し、1983年に、センターが正式に竣工しました。
研究センターは、主にパンダの繁殖やパンダの数の増加について応用基礎研究を行い、そして、そこからパンダを中心に稀少動物の行動や生態、飼養、繁殖、子育て、生理学、生物化学、内分泌、遺伝、病気の防止、人工回復及び、種と群落の観測などの分野において、基礎と応用の研究を行ってきました。
中国臥龍パンダ保護研究センターが設立して10数年以来、若くて実力の有る科学研究チームが育ってきました。
この中には、動植物生態学、生物学、地理情報システム、衛星位置測定システムによる生態環境分析と評価、予防及び臨床獣医学、飼養学、栄養学、繁殖学、生物化学、遺伝工学、細胞生物学などの専門的人材が含まれます。
パンダの専門家は十数年の研究経験を持って、やがてパンダ繁殖における「種の交配」、「妊娠」、「赤ちゃんパンダの生存」という三大難問を解決しました。
1998年「臥龍中国パンダ保護研究センター」では、出産4回5頭のパンダが生まれ、うち4頭の子パンダが生存しました。1999年は出産4回8頭のパンダが生まれ、うち7頭が生存しました。2000年には出産8回で12頭のパンダが生まれたのに対して、うち11頭のパンダが生きてこられ、生存率は92%になりました。2001年出産2回4頭のパンダが生まれ、すべて生存しました。生存率は100%に達成しました。
現在、研究センターで保護しているパンダは61頭も有り、世界で最大の人口飼育パンダ群になっています。
これは、パンダの人工繁殖及び科学研究の成果であり、研究センターが絶滅に瀕しているパンダを救助する為に長年努力した結果でもあります。
近年以来、「臥龍中国パンダ保護研究センター」は山西省農業科学研究院、北京師範大学、東北林業大学、四川農業大学などと提携して、パンダを中心に稀少動物に関する更なる一連の科学研究を進めています。と同時に、海外との交流も強化しています。
最近、センターは、アメリカ国家癌研究センター、アメリカサンチアゴ動物園協会、アメリカカリフォルニア大学ボクリー分校、アメリカミシガン大学及び中国科学院生態研究センターと協力して臥龍自然保護区における「GPS」の応用研究を行っています。
我々は又、日本神戸王子動物園、サンチアゴ動物園及びワシントン動物園との間で、パンダ飼育繁殖に関する共同科学研究を行っています。そして、センターのスタッフを日本やアメリカへ派遣し、研修させると同時に、海外から数十人の専門家を迎え、パンダの保護や研究におけるレベルアップをはかりながら、積極的に交流を重ね、国内外から来たパンダ飼育研修者に対して、飼育管理、パンダの行動観察、パンダ疾患の予防と治療などについて指導を行い、パンダの保護に携わる人たちに的確な知識を伝えることに努めてきました。
「臥龍中国パンダ保護研究センター」は、多年の研究成果から専門著作を9冊出版し、研究論文を300篇発表しました。そのうち、4項目の研究プロジェクトは中国林業省や四川省科学技術成果賞をもらい、延べ5人は科学技術優秀論文賞を獲得しました。
1990年から2001年9月まで、「中国臥龍パンダ保護研究センター」では、人口繁殖の方法により、パンダが34回、53頭を出産して、内41頭が無事生存しました。しかも、今まで海外、国内で初めて三つ子パンダの出産が奇跡的に成功したことがあります。
われわれが編集した『パンダの飼養と繁殖』を間もなく出版することになり、飼育パンダの繁殖事業にとってとても有意義なことです。
われわれがパンダを飼養する最終の目的は、パンダを野生に戻し、絶滅に瀕しているパンダの数を増やして、パンダが永遠に我々人間と一緒に生き残っていくことを望んでいるところです。
「九五」(第九の五ヵ年国家建設計画)期間中、われわれは、パンダ舎の拡大工事を完成しました。
そして、2000年に「中華パンダ園第一期工事」も完成させ、パンダの半野生、半飼養の環境を作りあげました。
われわれは更に「中華パンダ園第二期工事」というプロジェクトを立案し、8000万~1億万人民元の投資を誘致して、野外に4~5平方キロメートルのパンダ生存区域を作る予定です。
そこで、われわれはパンダを野外に戻す為の試験や研究を行いたいです。2010年までに、せめて5頭のパンダが野外に戻せる事を望んでいます。これは大変難しい課題ですから、目的を達成する為に、われわれは次の世代と一緒に努力をしなければなりません。
海外で育てられている臥龍のパンダたち
名 前 | 出生時期 | 出国時間 | 所在国 |
---|---|---|---|
林恵 (リンフェ) | 2001.9.28 | 2003.10.12 | タイ チェンマイ動物園 |
創創 (ツゥアンツゥアン) | 2000.8.6 | 2003.10.12 | タイ チェンマイ動物園 |
陽陽 (ヤンヤン) | 2000.8.10 | 2003.3.14 | オーストリア シェーンブルン動物園 |
龍徽 (ロンホィ) | 2000.9.26 | 2003.3.14 | オーストリア シェーンブルン動物園 |
白雲 (バイユン) | 1991.9.7 | 1996.9.6 | アメリカ サンディエゴ動物園 |
石石 (シーシー) | 1982秋 | 1996.9.6 | アメリカ サンディエゴ動物園 |
華美 (ホアメイ) | 1999.7.21 | 1999.7.21 | アメリカ サンディエゴ動物園 |
錦竹 (ジンツー) | 1996.8.12 | 2000.7.14 | 日本 神戸市立王子動物園 |
爽爽 (スウアンスウアン) | 1993秋 | 2000.7.14 | 日本 神戸市立王子動物園 |
添添 (ティエンティエン) | 1997.8.27 | 2000.12.6 | アメリカ ワシントン国立動物園 |
美香 (メイシアン) | 1998.7.22 | 2000.12.6 | アメリカ ワシントン国立動物園 |
安安 (アンアン) | 1987秋 | 1999.3.11 | 香港 海洋公園 |
佳佳 (ジィァジィア) | 1977 | 1999.3.11 | 香港 海洋公園 |
日本パンダ保護協会及び日本の皆様へ
[日本語訳]
日本パンダ保護協会及び日本の皆様へのお見舞い
日本パンダ保護協会 :
現地時間 2011 年 3 月 11 日 14 時 46 分、日本宮城県以東の太平洋海域にて深度 10km の浅い地点を震源地としてマグニチュード 9.0 の地震が発生し、現地では地震及び津波による甚大な人的被害と建物の損壊を被った。我々は臥龍パンダクラブを代表して被災地の皆様にお見舞いを申し上げるとともに、不遇の被害にあった多くの方々に哀悼の意を示します。また、被災地にて救護活動に尽力された自衛隊はじめ多くの方々に最高の敬意を表したく存じ上げます。貴政府の力強い指導の下で、諸外国からの手厚い支援の下で、国民が一致団結して災難に立ち向かうことで、日本の方々が必ずやこの困難に打ち克ち、素晴らしい国家を建て直すであろうことを我々は固く信じております。
以上
2011 年 3 月 11 日
臥龍パンダ クラブ
副センター長 王 鵬彦さんからメッセージ
私たちはパンダの故郷―中国四川省臥龍パンダ研究センターのスタッフです。
パンダ絶滅を阻止する為に、パンダの保護を行っております。
パンダは今、世界におよそ1596頭しかいない希少動物です。
当センターは主にパンダ保護の為にパンダを総合的に研究をしております。
私達センターの活動の一部と当センターで飼育されたパンダの話をご紹介します。
傷だらけで救出されたパンダ「雷雷」(レイレイ)は、左手を失っていました。
当然、国内外の専門家は皆、「雷雷」は子供を産むことは出来ないであろうと診断しましたが、2000年に当センターで子パンダを生み、しかも自力で子パンダを育てています。
また「美女」月月(ユウェユウェ)は子宮の病気にかかっていましたが、意外にも当センターで、2000年に初出産ができました。
野生で生活する中で怪我をしてしまい脳に障害をもつ「21号」は当センターでとても可愛がられているパンダで、1997年から今まで5年間連続して子供を生みつづけていますが、脳の障害により、子パンダに授乳する事さえも忘れてしまい、自分の子を育てられないでいました。
研究センターのスタッフと飼育係は、彼女に子パンダの育て方を一生懸命教え、大変心血を注ぎました。
4年間の歳月を経て、「21号」は子供を生み、半月後、やっと自分の子供に哺乳することが出来るようになりました。
臥龍は、パンダにとってとても恵まれている自然環境ですが、パンダが生息する区域は地域開発により以前より縮小しております。
さらに自然環境の変化により、パンダの餌である笹が急激に減少し、パンダの食料難が、彼らに生存危機をもたらしています。
臥龍パンダ保護センターは、中国政府、国連の支援を得て、パンダの保護と繁殖のため、一所懸命努力していますが、
さらに悪化している自然環境の中で、パンダの研究や繁殖、保護を満足に行うことが出来ません。
パンダの生態系の維持やパンダの人工繁殖、パンダの養育と治療に巨額の費用がかかります。
研究設備と人材が不足していることも我々は大変憂慮しています。
このように多くの困難に直面していますが、世界のパンダを保護するために、全身全霊を傾けて頑張っていきたいと思います。
どうか、貴方の目をパンダに向けて、パンダに関心を寄せていただけますか?
そして、われわれと手を携えて、パンダの保護に、自然環境の保護に皆の知恵や力を結集していこうではありませんか!